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スメル男
2007-12-24 Mon 13:10
スメル男 (講談社文庫) スメル男
原田 宗典



『十九、二十』読後、原田宗典は只者ではないなとの印象をうけた。ユーモア溢れる文体と、さめた視線の登場人物たちが、僕の好みに合致していたのも一つの理由だろう。


 日常のごくありふれたシーンから始まる『スメル男』は、読み進むうちにだんだんと、話のスケールが大きくなっていく。
 嗅覚を失った主人公は、ひょんなことから都市を覆うほどの強烈な体臭を発しだす。その原因は、実はある企業のたくらみによるものだった。
 作品前半と後半とを比較すると、明らかに雰囲気が違う。わりとコメディチックにはじまる本作だが、後半ではわりとシリアスなエピソードが多く、不覚にも目になみだを溜めてしまった。全体の統一感がない反面、ストーリー展開の意外性はおもしろかった。
 そんなわけで破綻なく400ページという長編を書き上げられたのは、特筆すべき点だろう。巧みに張り巡らされた伏線など、エンターテイメント作家としての技術が、物語を支えていた。

 『スメル男』以降、原田宗典は短編の修練に励む。僕としては、もっと長編を書いてもらいたいところだが、たしかに短編でこそ原田宗典らしさが発揮されるのかもしれない。『スメル男』は中だるみを避けるために、随所に読者を飽きさせないための技巧がほどこされ、作者の苦労の跡が滲みでている。
 しかし短編を書くにあたっては、そういった小説的なしかけが、高い密度で発揮され、かつ重要な場面に集約されるはずである。『スメル男』の後に発表された中篇『十九、二十』は、原田宗典の適性が長編よりも短編であることを物語るひとつの好例だろう。短編、エッセイで活躍する原田氏に今後も注目していきたい。


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21g
2007-12-22 Sat 11:29

21g_ma.jpg


製作年度 2003年
上映時間 124分
監督 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
脚本 ギジェルモ・アリアガ
出演 ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロ、
    シャルロット・ゲンズブール、メリッサ・レオ、
    クレア・デュヴァル、ダニー・ヒューストン



 過去に3回レンタルしたが、3回とも鑑賞せずに返却した。
観ようと思えば観ることはできたのだが、かのイニャリトゥ監督の作品とあっては、気分に余裕があるときに、ぜひとも腰を据えて観たかったのだ。
↑映画館へ行けってなもんだがね。

 かつてイニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』を観たときの衝撃は忘れられない。欠点が見当たらない完璧な作品に出会うなんてことは、そうそうない。映画も人生も知り尽くした一握りの監督によって、ときどき生み出されるのだ。きっと。


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『21g』もやはり傑作。
時系列がバラバラのカットが、合間合間に挿入される独特の構成。前半、意味が分からなかったカットが、次第に理解できてくるという新鮮な映像体験ができる。編集技術は相変わらず鮮やかだ。しかし、この複雑な構成の存在意義については、賛否が分かれるところではないか。映画『イージー・ライダー』の粗い構成は、ドラッグで現実感覚を失ったヒッピー達の姿を効果的に描写するのが狙いだったはずだ。一方『21g』では、この凝った構成とストーリーとの間に関連性が見当たらず、必要ない気がしないでもない。ここは、識者の意見を仰ぎたいところだ。

 交通事故をきっかけに、数奇な運命を辿る人々。彼らは人の命の重さを改めて噛みしめ、自らの人生を呪う。青臭いといえば、青臭いテーマだ。しかし、監督の熟達した演出により、きれい事では済まない現実的な問題として、テーマが深められている。残念ながら、『アモーレス・ペロス』ほどの衝撃を味わうことはできなかったが、彼がやはり一流の映画監督であることを確信した。


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ヴィタール
2007-12-14 Fri 03:26

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製作年度 2004年
上映時間 86分
監督・脚本 塚本晋也
出演 浅野忠信、柄本奈美、KIKI、岸部一徳、國村隼



塚本晋也監督は、相変わらず変わった映画を撮り続けている。
ちょっと前までは、こういうよく分からない演出がかっこいいなんて思ってたけど、最近の僕は、アート系の作品を意識的に避けている。アートという大義名分の下、わざと分かりにくい映画を作って、観客を煙に巻いているだけなんじゃないか、てな邪推をしてしまうのだ。

 アート系映画に対する僕の偏見を以下に列挙。


 ①主人公の悩みが特殊すぎて、共感しづらい。

 ②ストーリーがとにかく分かりにくい。

 ③映像が派手。フラッシュ多し。アップ多し。カット短し。

 ④クライマックスでなぜか主人公が叫ぶ。

 ⑤その後なぜか物語が解決。


 話がそれた。『ヴィタール』に話を戻します。

10000118672.jpg


 解剖学から着想を得たテーマは斬新だ。
主人公高木博史は、医学部にて解剖実習を行うことになるが、実習に割り振られた遺体は、偶然にも事故で死んだ元恋人であった。はじめは戸惑いを隠せなかった博史だったが、次第に恋人の解剖にのめりこんでいく。
 異常な形の愛情として、肉体の内部に迫っていく展開は、なにやら文学的だ。熱心に恋人の臓器を写生する博史の姿は、なんとも哀れで、かつ不気味。しかし欲を言えば、せっかくの非凡な着想をもう少し膨らませてもらいたかった。特に大きな発展もなく、しりすぼみに終わったのが残念。
 ところで本作もまた、先ほど列挙した僕の偏見に、若干あてはまっているようだ。観客をグッと惹きつけておくためには、一般的な現実感覚を忘れてはならない。


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救命艇
2007-12-10 Mon 02:36
s-kyuumei.jpg


製作年度 1944年
上映時間 96分
監督 アルフレッド・ヒッチコック
原案 ジョン・スタインベック
脚本 ジョー・スワーリング
撮影 グレン・マックウイリアムズ
出演 タルラ・バンクヘッド、ウイリアム・ベンディックス
    ウォルター・スレザク、メアリー・アンダースン
    ジョン・ホディアク、ヘンリー・ヒル、アリス・マッケンジー
    カナダ・リー、ヘザー・エンジェル


 ヒッチコックの作品は、後期よりも前期の方が好みだ。
観客を飽きさせない技術は、前期のほうが冴え渡っている気がする。後期は後期で、円熟した演出が見られるのだが。
 本作は、ヒッチコックがアメリカへ渡ってほどなくして製作された作品であり、イギリス時代の作風をまだ漂わせている。


以下、ネタバレ。


 ドイツ軍の砲撃を受けた輸送船が、無残にも海上に沈んでゆくシーンで幕を開ける本作。生き残った乗員は、命からがら救命艇にたどり着くが、航海の経験がない素人たちが、広大な海の中に放り出されることとなった。
 まず、脚本としてうまいと思ったのは、砲撃を放った相手であるドイツ軍の船員と、航海をともにする状況をつくりだしたこと。しかも、彼は、救命艇の中の素人達とは違い、船乗りとしての経験が豊富。また医学にも精通している。つまり、敵国の軍人でありながら、彼に頼らざをを得ないジレンマが生まれる。
 彼がいい奴なのか悪い奴なのか、ストーリーが進むにつれ、どんどん分からなくなる。これはサスペンスの基本だが、僕は本作でまんまと騙されてしまった。
 
 余談だが、作品冒頭において、敵国軍人がいい奴かもしれない、なんて描き方がなされ、「戦時下に製作されたにもかかわらず、なんてリベラルな国なんだ」と鑑賞中に感心してしまう。しかし、ストーリーが進むにつれ、やはりヒッチコックも時代の暗雲に飲み込まれていることが、だんだんと露呈していく。
 終盤、乗員が決起しドイツ軍人を海へ放り投げるシーンは、その象徴。当時は(から?)国全体が、上からものを見下ろしていたのだろう。


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タイガー&ドラゴン
2007-12-09 Sun 02:08
tigerdoragon.jpg


放映年度 2005年
制作 TBS
脚本 宮藤官九郎
監督 金子文紀
出演 長瀬智也、岡田准一、伊東美咲、塚本高史、蒼井優、
    阿部サダヲ、西田敏行、笑福亭鶴瓶


 いまさらというようなドラマを引っ張りだして見ています。
しかし、クドカンは、やっぱりすごいな~。古典落語のネタを生かしつつ、現代風にアレンジしたストーリーは新鮮だ。
 とはいっても落語のネタと実際に起きた事件が錯綜する複雑な構成に、はじめは少々戸惑いを覚えた。物語を完全に理解しようとするならば、2、3度視聴すべきだが、分からないところは流して、分かるところだけ追っていっても、十分楽しめる。
 そんなわけで、テレビドラマとしては、かなり挑戦的だったのではないだろうか。

 オチがバシッと決まっている回もあれば、なんかイマイチだなと思うような不完全燃焼の回もある。最終回に近づくにつれ、それ落語じゃなくね?ってな回もあった。しかし、そこらへんの破綻を差し引いても、人情溢れる物語はなかなか深みがあり、う~むとうならされることしばしば。
 個人的には、「小虎と銀次郎」、「小虎と師匠」の関係が粋で、感動のあまり何度かため息をもらした。

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 ところで、落語がテーマのドラマとして、この秋から『ちりとてちん』(朝ドラ)が始まった。『タイガー&ドラゴン』とは、方向性が異なるが、これまた優れたドラマである。『タイガー&ドラゴン』が演劇的にノリで笑わせていたのに対し、『ちりとてちん』はセリフのひねりで、笑いをとる。後者のほうが、きっと幅広い世代にうけることだろう。コメディの質という点では、『ちりとてちん』の方が一枚上手といえるか。
 しかし、いずれのドラマも題材をよく研究しているようで、素人から見ても、落語の世界って奥が深いんだな~と感じた。
 挑戦的なクドカンの作品に今後も注目していきたい。


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ナニワ金融道
2007-12-03 Mon 02:52
ナニワ金融道 (1) (講談社漫画文庫) ナニワ金融道


金貸しとは、基本的には、顧客に現金を貸したときの利息で利益を上げていくものだ。しかし、簡単そうに見えるこの工程の裏には、予想以上に深いノウハウが詰まっている。高利である街金に足を運ぶ連中は、たいてい金策につきている。したがってそういった連中に融資する際は、元金の回収の可能性(固定資産だったり、親戚の財産だったり)を先回りして調査する。金貸しの理想とは、多額の金を貸し付け、かつ、顧客から元金と利息をもれなく回収することである。

『ナニワ金融道』に登場する帝国金融は、法律スレスレのところで、元金の回収を実行する。この場合、法律の知識も必要だが、いかに人を扇動するかという、人心掌握の技術が重要となってくる。街金もビジネスの一種であるとしたら、ビジネスは論理だけではうまくゆかないということを、象徴的に示唆しているように感じた。こういった金融業の細かなノウハウとともに描かれた、世の中のグレーゾーンは、なんとも興味深い。

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 まるで落書きのような絵柄は、人によっては抵抗があるかもしれないが、よくよく見るとこれがまた味わい深い。この単純な絵柄に反するかのように、作品世界は実にリアルで、全編を通して鋭い人間描写が冴え渡っている。
 本作の一つのおもしろさは、徐々に没落していく人間の様子である。いかにも怪しい人間に騙され、資産を奪い取られる顧客の姿は、あまりに悲惨で直視できないが、その顛末まで見届けたくなるのが人情。人間の不幸を描き、おもしろさを生み出す。意外にこのタイプのストーリー展開を採用しているクリエイターは少ない。最近の漫画だと、『闇金ウシジマくん』が、これを推し進めた数少ない例だろう。個人的な見解だが、この部分を研究すると、まだまだストーリ展開のバリエーションが広がりそうである。

 本書では、金融のしくみを説明しつつ、各登場人物の人間性を描き、かつ読者を引き込むストーリーを展開させている。この脅威の構成力を持ち合わせている青木は漫画家としてのデビューが45歳と、遅咲きであった。『ナニワ金融道』連載終了後は、漫画家を引退。少産の作家であるのが、惜しまれるところだが、作風は『カバチタレ』などにしっかりと受け継がれている。
 引退後しばらくエッセイなどを連載していた青木は、2003年9月に肺ガンで亡くなった。


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 機械材料加工学Ⅱ 

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kkaazz2000

Author:kkaazz2000
技術系。神奈川在住。

歴史から消えつつあるカルト映画たち。さもありなんという作品から、なぜこれがという作品まで。そんな不可思議な世界にはまりつつある今日この頃です。

 
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