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野火
2007-08-11 Sat 17:01
野火 (新潮文庫)野火 

大岡 昇平



 文壇有数の骨太論争家として知られる大岡昇平による戦争小説。
フィリピン、レイテ島に派兵された主人公・田村は、野戦病院にて休養中、米軍機からの襲撃を受ける。田村は命からがらその場を逃げ失せ、独り島の中をさまよう。
 極限状態に面した兵隊たちは、エゴイズムを剥きだしにし、味方同士で食料を奪い合う。そして、田村もまた次第に理性を失っていく。
 食料がつき空腹に耐えきれなくなった田村は、狂って死んだ戦友の肉をナイフで切り取ろうとする。しかし、田村の左手がナイフを持つ右手を制す。

 「(比島の女や戦友を)殺したのは、戦争とか神とか偶然とか、私以外の力の結果であるが、たしかに私の意志では食べなかった。」(p176)

神の存在を否定してきた田村は、その是非を省みる。理性がうまく機能しなくなった状況下では、やはり神の存在が必要ではないか、そんな問いかけが見みられる。フィリピンの山中に見られる野火は、その下にいるであろう現地人の存在を暗示し、隊を外れた孤独な田村にとって、命の危険を意味する。

 「しかし銃を持った堕天使であった前の世の私は、人間共を懲すつもりで、実は彼等を食べたかったのかも知れなかった。野火を見れば、必ずそこに人間を探しに行った私の秘密の願望は、そこにあったのかも知れなかった。」(p176)

 人肉を食らうことを意志で制した田村は、天使に昇華した。田村にとって、エゴイズムを制すことのできない他の人間達は懲らしめるべき存在なのである。人肉を猿の肉と偽る安田、松永の姿に、著者の人間に対する悲しげな諦観を感じる。


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技術系。神奈川在住。

歴史から消えつつあるカルト映画たち。さもありなんという作品から、なぜこれがという作品まで。そんな不可思議な世界にはまりつつある今日この頃です。

 
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